本宮くんは

「本宮くんはほんと臆病だよね」

「本宮くんの受け答えっていつも、”うんと”から始まるよね」

「本宮くんは、緑色の服が多いよね」

 それが合ってようが合ってなかろうが、須崎は分析が好きだ。○○は☓☓だよね。

 好きという感情を風船に例えられるならば、好きという感情が始まったとき、それは大きく膨らんでいく。膨らむ理由を探して、昨日よりも今日。今日よりも明日。より膨らんでいく。膨らませる理由はなんでも良い。鶏肉が好きとか顎にほくろがあるとかそんなんで良い。ほんとなんでも良い。

 付き合って2ヶ月。その膨らんだ風船が急速にしぼむこともある。それがさっき言った、分析癖なのだ。しぼむ理由は曖昧じゃない。はっきりしている。

 分析されて嫌な気持ちがするが、一番嫌なのは分析されて、その発言を受けた時ではない。 

 言ってみれば、彼女の作った滑走路があって、それに従った行動を取ることになってしまった時。その時の目。その時の口元。嫌な気持ちで心が重くなる。

「本宮くんはほんと臆病だよね」と言われて、ひかれた滑走路。その通りを行動してしまった時の笑い。どうしようもなくイライラする。